劇団Temp’sという劇団の第Δ回公演にようこそ! 今はまた漂泊してさてどこへ行ったのか、友人Sの呟きから聞いて欲しい―― 「仮にぼくをSとしよう。 ぼくは死ねなかった男。いや、死ななかった男。世の中には、そんな諦めの悪い夢見がちな人間が大勢いるものだ。人は恨みで死なないのではない。それを心残りというなら、読みかけの小説をしかも掉尾にかかった小説を止められないのに似ている。そしてそれは夢である――。 ある時ぼくは、ぼくの書いたスコアを元に写真を撮ったという娘の卒業制作展に行った。そう、影はこう自立して生きるものかと、よい心持でフラフラと帰り道へ出た。大好きな温かい45億年前の月が出ていた。誘われるままに塀を跨いで(実体などないのだからぼくには容易いことだ)海に近い或る都立公園へ入った。茶室を建てようとした名残だという奇妙な石柱の立つ公園だ。その傍らの大きな池にホラ、玉兎が映って。ぼくはアンデルセンになってその友人と話そうと水面へ近づいた。するとそこに、ひとりの老人が立っていた。 『いい夜ですね。浮かれ者は、月の表で影と出会う。こんな池の面で友達と、友達の詩人とね』 月に浮かれて飛び出た影は、月の面で誰と逢う―― これは、その老人に聞いた話である。大きな、大きな、その老人に」 それはレーブンさんだったのかもしれない……。 「Sが語った話は、まるで唐突な、まるで『どんぐりと山猫』的な印象だった。 あるところで“月の詩人”と名乗るヘンな老人と出会った。促されるままに招待状を (彼は招聘状だというが、もらった方はさぞ驚いたろう。半ば強引な、意味不明の招待状。 『教養のないアイデアも、アイデアのない教養もダメだ』、彼の口癖にボクも賛同するが、 時に彼の突飛な行動は、ボクに軽いvertigeを起こさせる) それに集まった粋人たちが、もはや酔客の方が適当だろう、第Ⅳセナークルを形成する。 そしてそれがコンタクトを試みる。つまり旅の舟に乗るのだ。 BCの深い頃、師の影を追って同期を試みた13人の弟子たちが忽然と姿を消した。 “ネキュイアの眠り”と云われる伝説だ。この舟は現在-いま-に漂うという。 そして同じく師の光を探した13人の弟子たち、仲間の家の二階で(ここがセナークルと呼ばれた) 敬虔な祈りを捧げた。 そして時代は動乱の19世紀、ただ愛の深い、物語が好きで蝶を追うことの好きだった男の下に 芸術家たちが集まった。男は政治が下手だったために孤独の中で目を閉じた。 男は一冊の本になりたかった。 彼の温かな炉辺語りに再び子供の様に膝を囲みたいと、無垢な動機を取り戻した13人の門人たちは、 閾-しきみ-を越える手段を探した。 図書館の夜――。男が館長を務めた図書館の奥深くで、彼らは一羽の大鴉と出会う。 歴史の水先に必ず現れる数を食べるカラスである。名をレーブンという。またはリリスと。 そして本が、つまり図書館が“時”を越えるワームホールであると知る。 ガタガタと書架が震えた。軽い眩暈がタイトルの載る背中を小口に変えていた。 そして―― Sが云った。『いいところまで行ったんだが彼らは間違えた、なぜだか分かるかい?』 アルスナル → アレクサンドリアのセムイオン → エフェソスのセルシウス 月の女神アルテミスの守る遺跡の図書館を出て、彼らはクレテス通り、バシリカを見ながら、 大劇場、ハーバーストリート、マーケットアゴラへと向かう。 大プリニウスの認めた127本あるという石柱の、中から任意に“ある本数”選び出し、 『動機が分からなくなったら素数に倣って解体してみること』 Sはニヤッと笑って、その種明かしをしてくれた。 #
by quovadis2011
| 2008-04-10 12:32
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| 2008-04-09 00:30
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